AKATSUKA x HANEMAN TECH

My diary of cloud computing, Community, working strategy.

クラウドのサブスクリプションビジネスのカスタマーサクセスってこんなかんじ?

みなさんこんにちは、赤塚です。
はやいもので2018年10月からデジタルキューブにCSMとしてジョインして2ヶ月近く過ぎようとしていますので、近況報告をかねて私の仕事内容や考えを手短かにまとめてみたいと思います。

デジタルキューブについて

デジタルキューブWordPressホスティングサービスやプロフェッショナルサービスを提供しているWordPressAWSのプロ集団で、約20名のメンバーが日本各地を中心に北米とヨーロッパからリモートで働いています。

お父さんお母さん、けして怪しい団体ではありませんので安心してください。
ascii.jp

もともと個人的にデジタルキューブメンバーとの付き合いは長く、特にShifterのプロジェクトに魅力を感じてジョインさせてもらいました。

f:id:tech-haneman:20181207095730p:plain

Shifterについて

Shifterはサーバーレスによるスタティックサイトジェネレーターを実現するWordPressの全く新しいホスティングサービスで、ユーザーが使い慣れたWordPressでページを作成すると、Shifterが完全に静的なHTMLに変換してCDNを通じて世界中の100以上のキャッシュ拠点から高速・セキュアにコンテンツ配信ができるメンテフリーなサービスです。 現在は北米・ヨーロッパのユーザーの割合が高いのですが、これから日本を含むアジア圏の方々にも使っていただけるよう活動をはじめています。

www.getshifter.io

現在のロール

  • 外向き:カスタマーサクセス マネージャー
  • 本当のやつ:CZO (Chief Zoo Officer)

デジタルキューブのカスタマーサクセスとは、CEO, 米国のCOOと連携しながら顧客の圧倒的な成功のためにどうすべきかを考え全方位で活動するChief Zoo Officerだとされています。 カスタマーサクセスの活動は社内教育やユーザーとの心温まる関係づくりではなく、ユーザーのビジネスの成長を担ってリードする成長のためのブースターです。

f:id:tech-haneman:20181207095800p:plain

今の仕事内容

  • ビルダーメンバーとしてプロダクトチームのイテレーションに参加
  • グローバルイベントチームとして各地に赴いてユーザーやコミュニティとオフラインで会話する
  • サポートメンバーの一人としてビジターやユーザーからの声をダイレクトに受け止め改善に回す

わたしが考えるサブスクリプション型サービスにマッチするものとしないもの

まずユーザーがサブスクリプションサービスに求めるものは、そこそこの満足ではなく圧倒的な成功と満足です。
その実現にはサービスを通して徹底的にユーザーと向き合い成功をリードするための一貫した活動が必要だと考えます。
以下が私の考えるサブスクリプション型サービスに必要な活動のあり方で、これらをベースに日々試行錯誤を続けています。

マーケティング
  • マッチするもの:自社サービスのファンや代弁者になり得る人たちとの出会い
  • マッチしないもの:名刺獲得数やイベント来場数のみをKPIとした活動

サブスクリプション型のサービスでは、サインアップして契約する行動はサービスへの投票行為だと考えれば、なぜ・だれと出会うために・どこで・どんなメッセージを発信するかはこれ以降のプロセスの出発点になるのではと考えています。

たとえばデジタルキューブは2009年からWordPressコミュニティへの貢献を続けていて、開発した100以上のWordPressプラグインのダウンロード数は270万を超えています。
私たちがOSSのファンとしてWordPressのミッションである「パブリッシングの民主化」を進めることがWhyであり、コミュニティの一員として無償のプラグインを楽しんで開発し、スポンサーとしてコミュニティを支え続けていることがHowであり社会への最大のメッセージだと考えます。

コミュニティへの貢献 www.digitalcube.jp

セールス
  • マッチするもの:最適なユーザーに向けたテックタッチによるセールス
  • マッチしないもの:名簿や名刺のリードに向けた電話・訪問でのハイタッチセールス

SIの直接見込み客と対話できる営業との違いは、見込み客との接点がテックタッチに限定されるPull型営業しかない点だと感じます。
マーケティングが獲得した見込み客を受けての突撃型のセールスではなく、マーケティングが出会ったファンを通じて長期的な利用者になってもらい、各チームが一貫してロイヤリティを高める活動を続けるのが理想だと思います。

デジタルキューブには電話での営業窓口なくてはじめは戸惑いましたが、サブスクリプションでは電話or訪問は必要なく、南米やロシアで会いたいと言われてもコストの回収にも時間がかかりすぎるので、テックタッチのアプローチに振り切る方が顧客・我々両方にとって幸せだと考えています。

プロダクト開発
  • マッチするもの:最適なユーザーのためのサービス開発
  • マッチしないもの:最大公約数的な機能開発

エンジニア・ビジネスメンバーどちらかにパワーバランスが偏っているビルダーチームの場合、開発者による開発者のためのプロセスや、営業が思い思いにとってきた商談のためのカスタマイズに陥ってしまうのではないでしょうか。

またエンジニアにデリバリープロセス全てを押し付けるのではなく、機能や顧客体験をビルダーチーム全員で責任を持ってイテレーションを設計するのが良いのではと思われます。
たとえば実装チームはCircleCIをつかって機能開発や改善を行い、ビジネスチームはあるべきUXの定義やブラッシュアップのためのテストに責任を持ち、カスタマーサクセスチームがリリース判断を行うようなイテレーションが考えられます。

サポート
  • マッチするもの:マシンラーニング (ML) やデータ解析を活用したプロアクティブな成功のサポート
  • マッチしないもの:従来型の問い合わせベースのサポートデスク

サブスクリプションビジネスに求められるのがユーザーの大成功・大満足なら、困りごとの問い合わせに答えるだけのサポートは今後MLを簡単に活用できるIntercomのAnswer botなどに置き換えられるでしょう。

www.intercom.com

これからのサポートは、継続的なログの自動モニタリンクをベースに、ユーザーの状態をリアルタイムに察知して、チャットウィンドウからプロアクティブに「エラーを検知しました。なにかお困りででしたらお気軽にどうぞ」と自動で呼びかけ、サポートチームが内部で連携してスマートにユーザーをリードする、あるいはプロフェッショナルらしく目の覚めるようなアドバイスをして、アップセル・クロスセルにつなげるのがこれからのサポートだと考えます。
もちろんユーザーが問い合わせする必要がないのが理想ですので、以下の運用との連携が必要になります。

運用
  • マッチするもの:最適なユーザーからのフィードバックに基づいた改善活動
  • マッチしないもの:一部のユーザーへの個別対応や人力での運用

サブスクリプション型サービスに必要な運用とは、徹底したモニタリングや自動化と、コミュニティからのフィードバックに基づいた改善活動が中心になるのではと考えています。

たとえばキャッシュフローではStripeを活用すれば月額や年額課金は簡単に実現できますし、KPIの実施ではCRMやBIツールと連携してMMRのレポートも自動化できます。
また従来型の満足度調査から生々しいフィードバックを得るのは簡単ではないですが、サポートチームでは24/7で世界中から多くの問い合わせが寄せられています。
不具合に対してはかなり手厳しいものもありますが、サポートのためのサポートにせず、これらの生の声を経営者も含めてチーム横断で真摯にいただくことがいちばんのフィードバックループなのかもしれません。

stripe.com

以上がCZOとなったわたしの近況です。

冒頭でも紹介したとおり、今年の締めくくりに、Snifterとしては初めて日本向けにも活動を始めます。
f:id:tech-haneman:20181207095625j:plain

レアなデジタルキューブメンバーも集結しますので、忘年会を兼ねてぜひお気軽に遊びにいらしてください!
eventregist.com

それでは!